LINN Klimax Kontrol SE、
Mark Levinson No.32LとJeff.R. Coherence、
FM acoustics FM266と。
1990年代から21世紀に誕生した各国の音楽文化やテクノロジーを凝縮した各社リファレンス・プリアンプ。
1990年代~2000年代のハイエンド&リファレンスUSEDプリアンプ共演!

LINN Klimax Kontrol ×2モノ仕様やSE/dバージョン、Mark Levinson No.32LとJeff Rowland Coherence、FM acoustics FM266等の入荷プリアンプを聴き比べをしてみました。ヴィンテージプリも合いまみえた試聴。
聴く時間は一日平均で5,6時間は聴いている勘定となります。多い時では買取や入荷時の確認、不具合出し、整備後の確認等で10時間位です。今回は一時代を風靡したハイエンドプリを聴いて、あらためて見直したプリとノックアウトされたプリがありました。走り書き程度ですがご参考ください。
LINN Klimax Kontrol SEの揺るがない安定度。
まずはLINN Klimax Kontrol SEです。3台目の入荷ですがいつも動作の安定性には感心するもので動作安定度が高いプリアンプです。
基板を見ますと合理的ですが、整備する事を考えると大変です。Klimaxシリーズは表面実装パーツが基本ですので基板交換による修理となるケースが多いのですがこれまで壊れた事は一度ありません。動作不具合も一度もないところは一流です。プリ単体だけですと今回の中では存在感が薄れましたが、上流からパワーまでをLINNで統一し、ある程度ゲインを開放していくことで本領を発揮します。最低1日間は通電しご判断ください。外観のスマートな印象から剥離していく痛快さがあります。
そしてKontrolのモノ使いはセパレーションが上がり、SE単体より音像の彫が深く、諧調も増え細やかになる傾向がありました。LINNマニアの間では流行ったようですね。電源供給はTRANSPARENTのアイソレーターPIMM(2口)からの供給です。
現在でも通用するS/NのJeff Rowland D.G Coherence。
今回見直したプリは、1990年代後半に登場したJeff Rowland D.G Coherenceです。電源投入後すぐに昨年扱わせて頂いた個体と同一型番なのかと疑う程に厚みがある音で空気の租密度が上がってました。CaldasのGolden ReferenceケーブルとTRANSPARENTアイソレーターから供給。
2日程経過すると音のつながりも自然で、かつてのROWLAND RESEARCH時代のMODEL 7等に組み合わせられたプリアンプ初代Coherence 1を彷彿とさせる温度感を思い出しました。
聴感上のS/N比はアルミ削り出しボディのCoherenceが文句なしです。普及帯のSynergy2や2iクラスとは性格よりも造り込みの差が音のクオリティとしてすぐ聴き分けられます。80年代に登場した初代Coherence 1は良い状態の個体が激減しています。



Mark Levinson No.32Lは黒豹の如し。
Mark Levinson No.32Lは圧し出しの強い音もしますし、時にはトゥイーター領域の表情が厳しく音楽音痴なプリとも聴こえる程に鳴らし込みのハードルが高いプリ、かもしれません。
良い状態の時は、エネルギー感が充実して愚直にひたむきに音楽を追いかける豹のようでもあります。パワーアンプの特色をよく出してくれるプリ。昨年から3台取り扱っていますが、個体毎の差に微妙で明快な差があると感じています。リファレンスプリと言っても聴き比べていくと非常に個性があるプリアンプです。決まった時のサウンドはクールで熱いものがあります。
Mark Levinson No.26LのHot&Bitterな世界。
同じMark Levinsonのかつてのリアファレンス No.26L(フルOH)は、32Lとも他のプリとも異なる角度から積極的に演奏者や音楽ディスク制作サイドの情熱を表現してくれるプリ。時に暑苦しいと思われるかもしれませんが一歩、二歩引いた表現より血の通った音が頼もしく、優しいと感じる事があります。
設計年度が古いから音が古いわけではありません。発売以降からの経年劣化部分を徹底的に整備することが重要です。そしてメーカーや設計者が開発当時にどんな世界を提示したかったかを察すれば自ずと回答が出るものです。2日以上通電すると滑らかさが増します。



演奏者の情感を変換することに賭けたFM acoustics FM266。
最後にFM acoustics FM266です。1990年代から2007年まで製造され、現在はMK2となったロングセラーのプリアンプ。端的に言えば中低域の躍動感と相反するミッドレンジから上の艶やかさが鬩ぎ合う危ういバランス。
試聴一日目はミッドレンジから上の温度感を伴うしなやかな艶は予想通りでしたが、中低域の反応が悪く、躍動感に乏しかったのですが、通電2日目以降はエッジで隅取りしない輪郭の確かさが出てきました。隈取をせず音の輪郭を表現するためには、楽器の鳴り出しから余韻までの情報を分解して正確に電気信号へ変換する必要があります。音が重なってくると微弱な音場情報等も含めて描き出す必要があります。さらには演奏者の情感や心情をも電気信号としてパワーアンプへ送り出していると感じるプリアンプは多くありません。
FM acoustics社の執拗なまでのパーツ選別理由(マッチング性)が解せます。ハイエンドプリの中でも本物の存在意義はこんなところでも感じる事が出来るかと思います。勝手知ったるシステムの中で融合させていくと、FM266以上のモデルでなくては駄目だという方がいらっしゃる事に思い至りました。
一番の特徴は音が重なっていった時の混濁感が極めてないプリで、オーディオでそういう音を聴くとドキッとします。オーディオ用語の分解能とは異なる能がある気がしてなりません。またどんなに音圧を上げていってもうるさくなりません。前オーナー様は255では物足りなかったと呟かれていました。※本来は視聴時にのみ電源を入れるそうです。
接続ケーブルをFM acoustics製にすることで格段にエネルギー感とつややかさのレベルが上がります。



隈取した中で音像表現や音場を展開させるプリアンプはハイエンドでも聴かれると思います。Ayre KX-RとFM266はそれらのプリとは一線を画しているように感じます。性格は異なりますが、同一線上にあるプリアンンプではないでしょうか。
上記いずれのプリアンプにクオリティの優劣はございません。ブランドの考え方や音楽へのアプローチだけ。ご自分の好みの音や聴かれる音楽、現システムとの相性ですので、お取引頂いているお客様にはご自宅試聴でお聴きになって下さい。
先週末からハイエンドプリ&パワーアンプやヴィンテージ機器、STUDER機、真空管パワーアンプ、ケーブル等々が入荷しました。上記プリを含めじっくりとお聴き頂けます。プリ以外の入荷品は現在、状態確認をしており、要整備入荷品はどこまで掘り下げて整備をするか検討中です。